インテリア、建築、介護関連の経験を活かし、
「老前整理」という新ビジネスを立ち上げた。
坂岡洋子さん
株式会社くらしかる代表取締役。インテリアコーディネーターやケアマネジャーなど多彩な資格と経験を組み合わせ、新しい視点から暮らしを豊かにする方法を提案している。
起業しても継続が難しいという声が多い中、クレオ大阪北「チャレンジオフィス」第1期生の坂岡さんは起業3年目に突入。オリジナリティ豊かなビジネスを立ち上げ、奮闘中だ。
多彩な分野を経験する中で感じたニーズ
会社勤めを経て、フリーランスのインテリアコーディネーター、2級建築士として17年ほど活動してきた坂岡さん。仕事の幅を広げようと考え、起業を志した。クレオ大阪北「チャレンジオフィス」の存在にも背中を押されてのこと。起業に必要な環境とノウハウが整った場だと聞いて、平成18年に入居した。
入居当初の事業内容は、バリアフリーを導入した住宅改修。 「この分野を選んだのは、福祉住環境コーディネーターとケアマネジャーの資格を持ち、介護施設などで働いた経験もあったから。高齢になった家族のために住宅を改修したのに、手すりの位置が暮らしに合わなかったなんていう、ユーザーの声もよく耳にしていたんです。介護の環境をもっとよくしたい、現場を知っている私だからこそできる発想があるのではと、大きな意欲を持ちました。」
ところが起業後、ビジネスの厳しさに直面することになる。
本当の正念場は起業してからだった
バリアフリーを導入した住宅改修という分野には、多くの企業がすでに参入していた。他社との差別化も図りにくく、価格競争にも巻き込まれがち。坂岡さんの発想やアイデアは、なかなか活かすことができなかった。次に介護をする立場の人たちがリフレッシュできるセミナーを企画したが、そういう人は参加する暇さえないのだと、逆に思い知らされた。
「ニーズがあってもそれだけでビジネスは成立しないと痛感。そんな時、介護施設で見聞きした、暮らしの悩みについて思い出しました。それは高齢を迎えた人々の『持ち物』。持ち物が多くてバリアフリーを導入できない、便利で快適な生活ができない、などです。高齢になると自分で持ち物を整理する体力、気力、判断力が衰えてしまう、この大きな問題を解決できればと考え始めました」。
本人や家族も悩んでいる。ただ、持ち物には思い出が詰まっているため、家族でも立ち入るのが難しい。そこで「還暦に注目しました。ちょうど退職や子どもの独立など人生の節目になっていることも多く、絶好の片付けどき。高齢を迎える前に、身の回りの物や人間関係を整理すれば気持ちがすっきりするし、家族の負担も軽減されるでしょう」。
まずは「老前整理」というネーミングにこだわり商標登録。講座や片付けのコンサルティングなど業務内容を固めるとともに「老前整理とは何か」を具体的に知ってもらうための連載小説をブログで紹介し始めた。
真価を問われるのは、まだまだこれから
業務の本格化を目前に控えた平成21年12月、社会的な課題の解決を目指すコミュニティビジネスのプランを評価する「CBプランコンペおおさか2009」でグランプリを受賞。暮らしを見つめ直し、精神的に豊かな老後を迎える準備をするという提案は、新規性があり、ニーズも高いと評価された。第1回目の講座を開催した時は、早速片付けコンサルティングの相談を受け、幸先の良いスタートを切る。
「全国の中高年を元気にしたい」という坂岡さん。連載小説の出版、老前整理の講師育成など、ビジネスを全国に広め、維持拡大するプランを固めつつある。起業3年目のブレイクに、多くの人が熱い期待を寄せている。
チャレンジする人へ
起業前に、経営や事業計画などビジネスには何が必要か勉強することをおすすめします。専門分野があっても、それだけでは経営を維持できません。またすぐに軌道に乗るとは限らないので、踏ん張れる覚悟を持つことも重要です。
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