子どもを産んでも当たり前に働き続けられる社会へ
NPO法人ノーベル代表 高 亜希さん
「困っている人がいたら助けたい」素直な気持ちでスタート
病児保育事業を立ち上げた高さん。きっかけは、勤務先の先輩が子育てと仕事の両立に悩んでいたこと。「困っている人がいたら助けたい」という高さんにとっては「普通」な気持ちからのスタートだった。
先輩の話を聞くまで、子どもがそんなに急に熱を出すものなのだということを知らなかったと苦笑。この「知らなかった」と言える素直な力と、「何とかしなくては」という熱い思いが、彼女の原動力だ。
誰一人賛成してくれない中でのスタート
インターネットで情報収集をはじめ、調べては人に会って直接話を聞くということを繰り返す中で、東京で既に病児保育に取り組んでいるフローレンスというNPOがあることを知り、2008年に単身東京にノウハウを学びに行くことに。
東京に行くときは、「世の中そんなに甘くない」と、誰一人賛成してくれる人はいなかった。しかし、「自分で決めたことをやり、後で失敗した方がいい」との思いから東京行きを決断。
1年間NPO法人フローレンスの駒崎弘樹代表のもとで働いた後、2009年4月にはノーベルのブログを立ち上げ、自らの活動を開始。翌年2月には病児保育サービスを開始した。
当初は、フローレンスの大阪支社という形を取ることも考えたという。しかし、保育は地域ごとにニーズが異なり、一律のサービスやスタンスを取ることは難しい。支社という形を取るのではなく、フローレンスの支援を受けながら独自にNPOとして立ち上げた。「ニーズは現場から出てくる」との思いから、事業が軌道に乗ってきた今でも、手を拡げ過ぎずに、ニーズを汲み取ることが出来る範囲でやっていきたいと考えている。
「子どもを産んでもあたり前に働き続けられる社会」というビジョンを掲げ、病児保育サービスに取り組む高さん。最近では、ワーク・ライフ・バランスに関する講演等の依頼も多い。ノーベルでは、スタッフも「きっちり定時で帰宅」が基本。オーバーワークになりがちなNPOでのワーク・ライフ・バランスのあり方の構築を目ざして、今は試行錯誤中でもある。
しかし、代表である高さん自身のワーク・ライフ・バランスは・・・? 今は、3年後に自分がいなくても回る組織を目ざして、覚悟を持って土台作り中。思いっきり「ワーク」が充実している毎日だ。ビジョンを持つことで長期的に「ワーク」と「ライフ」の実現が可能となるだろう。
経験もなく、当事者でもないからこそ
NPOを立ち上げたり、起業する女性の中には、当事者としての立場や、自らの経験の中からビジネスのシーズを見出す人も多い。しかし、高さんは結婚もしていないし、子どももいない、そして保育の経験もない中でのスタートだった。だからこそ、先入観なく相手のニーズにあったサービスを開発できているのではないだろうか。
「本当に社会が求めるのは何か?」ということを常に考え、独りよがりなサービスではなく、求められているサービスの実現を目ざす。起業家には独自性が求められるが、あえて自分の色をつけず、成功しているモデルを真似する潔さも大切にしている。 |