何も知らないところから飛び込んだNGO 自分自身が豊かになる機会を与えられた
山本 愛さん
大学卒業後、商社に勤務。カンボジア旅行をきっかけにアジアに興味を持ち、会社を退職した後、ネパールに留学。
「五感を通じての体験というのは何ものにもかえられない」と語る山本さん。人との出会いにはいろんな面白さがある、という彼女の原点は、「現場」にある。
「日本人に生まれてよかったね」 と言われて
「学生時代はアジアにもボランティアにも関心がなくて、旅行といえばヨーロッパなどの先進国ばかり。NGOやNPOというのが何の略かも知らなかったんですよ」と笑う山本さん。アジアとの出会いは「単なる観光のつもりだった」というカンボジア旅行がきっかけだった。
80年代の内戦の傷跡がまだ生々しかったカンボジアで、山本さんは日本では考えられないような現実を目の当たりにする。その次に訪れたネパールでも同様だった。「貧富の差は大きいし、マイノリティへの差別も激しい。ネパールでは私が日本人だと知ると、現地の人から『日本人に生まれてよかったね』と言われたんです。でも、複雑な心境で、日本に生まれてラッキー、と喜ぶ気持ちにはとてもなれませんでした」。
カンボジア旅行で偶然知り合いになったNGO職員の影響も大きい。日本の豊かな暮らしとアジアの貧しさとのつながり、開発援助の原点とは何かという話を聞くうちに、自分に何ができるのか、と考えずにはいられなくなった。
自分の言葉で現実を語りたい
カンボジア旅行から帰国した山本さんは、会社勤務の後、大阪YWCAの講座に週に1度通うようになった。開発援助等についての学習を進める一方、周囲にも途上国の貧しさ、支援の必要性を広めようとしたが、そこで彼女は壁にぶつかる。「実際に現場を知らないのだから自分の言葉で語れない。リアリティがないんです。現実を知らないことの危うさを感じました」。会社に勤務して4年、女性が企業で勤め続けることの閉塞感を感じ始めたこともあり、現場で自分を試したい、という気持ちが強くなってきた。「それまでと同じように仕事を続けながら、ボランティアとして活動するという選択もあったとは思います。もちろんこれからの生活も不安でした。両親も心配していましたし。でも、そのとき『勝負!』という気持ちになれたんです(笑)」。そして、4年間勤めた商社を辞め、ネパールに留学。平成14年からはアジアボランティアセンターのスタッフとしてスタディツアーや講座の企画、センターの経理などを担当している。
さまざまな人との出会いに感謝
「毎日が五感を通じて学ぶことの連続。そしてそれをいかに行動につなげるかが大切」と語る。その一方で、「経理や事務連絡という組織運営には欠かせない日常業務に時間が取られてしまう。本来の支援活動・学習活動の時間が十分に取れなくて」と、どのNGOでも共通の悩みを山本さんも口にする。「それでも、さまざまな活動を通じて多くの人とのつながりが増えていく。人とのつながりを通じて自分自身が豊かになる機会を与えられていることに感謝しています」。
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