デザイナーとしての自分に 新しい要素をプラスするチャレンジ
廣田好美さん
企画制作「クールデザイン+(プラス)」代表。 乳がん啓発と患者フォローのグループ「クールカフェ」主宰。 H18年度大阪市男女共同参画社会をめざす
グループ支援活動に採択され、冊子「乳がん手帳」発行。 乳がんの啓発のための「乳がんWeb手帳」を運営。同時に、乳がん患者さんのSNS「ほほコミ」運営。
乳がんという思いもかけないアクシデントを、これまでの自分の仕事を生かしながら、新しい取り組みへと昇華させていった廣田さん。そのバイタリティと前向きな姿勢を見習いたい。
デザイナーとして、もっと自分の想いを表現したい
グラフィックデザイナーとして開業した事務所「クールデザイン」は多くの有名企業のノベルティや販売ツールのデザインを手掛けてきた。事務所が軌道に乗り出した矢先、突然の「乳がん」の告知に廣田さんの生活は一変する。不安な手術と長い治療の日々。
仕事再開の時を迎えて、「また以前と同じ事を繰り返すのか」という自分への問いかけに対し、素直に「それはイヤだ」と感じた。「確かにクライアントの想いを表現する仕事にやりがいはありました。けれど、もっと自分の想いを表現する方法はないだろうか、と思ったんです」。
それからは自分が何をやりたいのか、何が好きなのか、大切なものは何なのか、それらを生かすにはどうすれば良いのか、これまでの軌跡を振りかえった。思いつくことをすべて紙に書き出し、自分自身を理解しようとした。「その頃が一番しんどかった。でも私にとって大切なものは人とのつながり、好きなことはデザイン、やりたいことは自分の体験や能力を社会に生かすことだと答えが出たんです」。
そこでスタートさせたのが、自分自身のがん体験を生かし、デザイナーとしての経験を使って社会の問題解決をめざす企画・デザイン室「クールデザイン+(プラス)」だった。
気軽な参加型にこだわった医療勉強会の立ち上げ
「クールデザイン+(プラス)」に改名してからの初チャレンジは、医療勉強会「クールカフェ」の実施だった。カフェで気軽に友達から情報を得るのと同じように、専門家から楽しみながら学ぶことをコンセプトとした。
乳がんの基礎知識について漫画を読み解きながら医師の解説を受けたり、乳がんにならないための食生活を学び、実際に乳がんになったときの治療方法、費用など具体的な情報を手に入れられることをめざした。講師には患者の目線で話を聞き、話ができる医師やソーシャルワーカーをお願いした。ひとりでも多くの乳がん患者に、勇気と明るさと正しい知識を持って病気に立ち向かってほしい。また、健康な女性が、乳がんを自分にも起こりうることと考え、予防に心がけてほしい。そんな思いをこめた。
参加型勉強会の反響には大きな手ごたえがあった。
医療、患者、行政、NPOそして企業をひとつに結んだ情報発信
「やりたいことはたくさんあるんです。どんどん増えるんです」と廣田さん。
「さらに音楽や料理などを取り入れて、医療講座のカフェを楽しく充実させていきたい。他に、患者が医者に確認すべき事柄をまとめて手引書にしたり、自分の心や体に関心を持つ大切さを伝えるための冊子やチラシの企画デザインを提案したい。デザイナーとしての職能を生かして、自分の想いを表現していきたいと思っています」。自らの仕事に体験をプラスした新しい情報発信をスタートさせている。
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