これまで情報誌クレオで掲載した「研究室長コラム〜データで読む男女共同参画〜」の記事を紹介します。
vol.1

「日本の特徴、M字型労働力率」はいずれ消えるか? 情報誌クレオ 平成30年7〜9月

vol.2

男女給与格差の推移の背景〜働き方や雇用形態も影響〜 情報誌クレオ 平成30年10〜12月

vol.3

2018年、家庭の働き方も男女共同参画へ 情報誌クレオ 平成31年1〜3月

vol.4

男性の育児休業取得率の推移 情報誌クレオ 令和元年7〜9月

 

vol.1 「日本の特徴、M字型労働力率」はいずれ消えるか?

 働き方をあらわす図が、15〜65歳の生産年齢人口の年齢階級別労働力率です。それぞれの年齢階級が労働に従事している率を示します。男女別や複数年のデータを一つの図に重ねると働き方の変化を読み取ることができます。
この図が示す1970年、1990年、そして2017年の約半世紀で女性の労働力全体は上昇しました。いわゆる「M字型」消失の傾向を示しています。つまり男性の労働力率のえがくかたち、逆U字型に近づいたのです。
20世紀後半、日本女性の働き方の特徴は「M字型労働力率」の存在でした。その原因は20歳代後半から30歳代の出産子育て期の女性が労働市場に登場しないからです。M字は日本の女性が育児という家族的責任を一手に引き受ける働き方の象徴といえます。
 男女雇用機会均等法30年余りの2017年、M字型の底があがりました。これは女性労働者増加として評価できます。ただこうした変化の背景に、同時に男女未婚率の上昇や低出生率の継続による少子化傾向が進行しています。さらに女性のパートや派遣労働者比率の増加など女性の働き方に関わる課題も拡大しつつあるのです。働く女性の量的増加は婚姻、出生とともに就労をめぐる質的条件の変化と深く関わっています。

<データ出所>労働政策研究研修機構(JILPT)「早わかり グラフで見る長期労働統計」(2018年6月2日取得)

 

 

vol.2 男女給与格差の推移の背景〜働き方や雇用形態も影響〜

 男女の給与格差の平成期の変遷を表す図が「男女間所定内給与格差の推移」です。就業分野の女性の現状を示す指標として『男女共同参画白書』にほぼ毎年掲載されてきました。
 平成29年、男性の賃金水準を100としたとき、女性の賃金は75.7です。女性の賃金は男性の4分の3、25%の男女格差があるということです。平成元年、女性の賃金は男性の6割でした。ということは「30年間で女性の賃金水準が男性に追いつきつつある」ということでしょうか。
女性の賃金水準が男性水準ののびより大きいとき、たしかに男女賃金格差は小さくなります。しかし、女性の賃金水準が上昇しなくても男性の賃金水準が停滞あるいは低下するとき、やはり男女格差は縮まるのです。
 平成で区切られる1990〜2010年代は、実は日本の賃金水準全体が停滞した時期でもありました。その時期は1991年のバブル崩壊後の「失われた10年あるいは20年」と重なります。バブル期まで日本の賃金水準はほぼ右肩上がりが続きました。そしてバブル崩壊以降、一転してそれまでの賃金上昇分のつけを払うように賃金停滞期が続いたのでした。
 平成の前半期、不況期に企業や雇い主は余剰人員を整理しました。そうした経営構造調整の結果、賃金の高い男性や正社員雇用に代えて、最低賃金水準で働く女性パートや男女の派遣労働者などを雇用する傾向が広がりました。その結果、平成を通じて正社員ではない働き方が拡大定着していき、男女を問わず低賃金で働く働き方と働く人が増えていったのです。
 男女賃金格差水準の推移データにはこのような“働き方”や“雇用形態”の変化も反映されています。

 

 

vol.3 2018年、家庭の働き方も男女共同参画へ

 共働き家族と無業の妻、つまり専業主婦のいる家族のそれぞれの世帯数の1980年から2017年まで推移を表す図です。1980年は、専業主婦世帯は1,100万世帯、共働き世帯は600万世帯でした。1980年以降、共働き世帯が増加、専業主婦世帯は減少し、2017年は完全に80年代と逆転しました。両者の転換の時期は1990年代です。
 1991年のバブル経済の崩壊をきっかけに、日本経済は経済と雇用の構造調整の時期に入っていきました。不況への対応は経済や経営組織の再構築、すなわちリストラです。具体的には、経費削減の中でもまず賃金抑制や人員整理が行われます。1990年代以降、企業は一斉に賃金抑制と人員整理に向かいました。その結果、90年代後半から2000年にかけて、じわじわと4%から5%に失業率が上昇しました。同時に低コストのパートや派遣労働など正社員以外の雇用、すなわち非正規雇用が拡大したのです。
 不況の影響は家族という単位で見れば、稼ぎ手である夫が失業することです。あるいは夫の賃金が下がれば妻がパートにでて家計不足分を補うことになります。新規学卒者採用も縮小し若年失業率が上昇したのもこの時期です。
1970年代の欧米では、オイルショックが構造調整のきっかけでした。日本では20年余り遅れた1990年代後半に構造調整が展開しました。その結果、2018年、女性も男性も共に所得を得る家族が6割以上を占めるようになったのです。

 

 

vol.4 男性の育児休業取得率の推移

 育児休業に関連する法制は、これまで男女雇用機会均等法(1985)や育児介護休業法(1995)等が成立、改正を重ねてきました。なかでも育児休業給付金の支給や育児休業中の社会保険料の免除等は、女性の育休取得率上昇を後押ししてきました。その一方で、日本の男性育児休業取得率はなかなか上昇していません。
民間企業の場合、女性の休業者が88.5%に対して、男性はわずか5.14%です。2000年代でも取得率は1?2%台が10年ほど続いています。(図2のデータのタテ軸の目もりは、女性は100%であるのに対して、男性は5.5%です。)
 しかし、平成27年(2015)以降、国家公務員の男性育児休業取得率が急増しています。なぜでしょうか。
 最大のきっかけは、女性活躍推進法の成立(2015)です。同法は労働者を雇用する国・地方公共団体・事業主に対して、行動計画策定を義務づけ、女性活躍推進政策の実行を促す法律です。行動計画の項目には、育児休業取得に関係する男女の働き方が入っています。また企業等事業者は、計画内容を国へ届出るとともにインターネット等での社会への公表が義務づけられました。さらに、行動計画を策定し一定の基準を満たす企業に対して国があたえるえるぼし認定マークも定められました。
 この法律に先行して、同じ方式で企業に対して行動計画策定を義務づけたのが次世代育成支援対策法(2003、2014改正)です。こちらは認定基準をみたすとくるみん認定マークが与えられます。企業が広報に利用して、自社のよい働き方をアピールするものとして、就活生にはなじみあるものになりつつあります。
 つまり、女性活躍推進法と次世代法は、育児休業取得の推進について、労働者個人の問題ではなく、職場や雇い主の責任でもあることを明確にしたのです。行動計画策定は責任の明確化とともに課題を検討し、目標を設定します。それぞれの組織で達成すべき目標を共有することで、労働者の雇い主だけでなく職場の管理職や職場の行動変化が徐々に生じています。
 特に、国家公務員では働き方改革や女性活躍が推進されるなかで、行動計画の実行を意識した管理者層のリーダーシップが発揮されるようになりました。たとえば2015年頃から厚生労働省では家族に子どもが生まれる予定の職員は男女に関わらず直属の上司とともに事務組織トップ層に面談し、育児休業取得を促されるようになったそうです。突出した国家公務員の男性育児休業取得率上昇は管理者層リーダーシップ効果を示す例といえるでしょう。

図1)男性の育児休業取得率(民間企業、国家公務員、地方公務員)

<データ出所>『平成30年男女共同参画白書』2019年5月1日取得

図2)男女の育児休業取得率(民間企業)

<データ出所>『平成29年度雇用均等基本調査』 2019年5月1日取得